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横浜地方裁判所小田原支部 昭和43年(ワ)254号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>を総合すれば、

本件自動車は、原告会社が昭和四三年八月中に代金八五三、〇〇〇円で買い受けて、同月二一日原告会社名義に登録された新車であるが、現実に原告会社に納入されたのは、同年九月五日であり、本件事故は同月一四日であるから原告会社における使用期間は僅か一〇日に過ぎないものであつた。<中略>

原告会社は、修理直後頃、本件自動車は一度事故に遭つた車であるから、眼に見えない欠陥が生じて、何時どんな事故を起さないとも限らないと考え、これを下取に出して新車に買い替えたいとして、自動車会社にその旨を申し入れた。ところが自動車の査定員の査定した本件自動車の価額は金五五万円とあまりに低額であつたので、原告会社としては新車の買替をあきらめ、本件自動車を昭和四五年の春まで約一年半使用した上で下取に出して新車と買替えたが、本件自動車の下取価額は金三五万円に過ぎなかつた。なお、前記査定員の査定によると本件事故による本件自動車の減価額は金二万円と見積られていたが、その査定のあつた昭和四三年当時、四三年型の車の下取価額は、同じ年度の関係から、業界では査定員に知らしてなかつた。

一般に、新車価額八五万円のトヨペットクラウンバン型自動車を二年間普通に使用した場合における新車と買替える際の下取価額は、種々の条件によつて異るけれども、査定員の査定価額よりも相当上廻り平均的には金四〇万円と見られており、一年半使用したに過ぎないものについては、営業車である点を考慮しても、その下取価額は最低四五万円に達する。と認められ、右認定を動かすに足りる証拠はない。

我が国における自動車の価額形成の方法は極めて複雑であり、必ずしも利用者の方を向いたものではなく、製造業者ないし販売業者の利益を中心として形成されているものであることは、多言を要しないところである。しかして、新車を買つて登録をすることによつて、いわゆる登録落ちと称して、これを使用しない場合でも新車価額の二〇ないし三〇パーセントの減価を見ることも一般に衆知されているところである。自動車査定協会に属する査定人の査定価額が、一般自由市場における交換価額とされているのも同様に一般人の知るところである。又、販売業者は、殆んど製造業者と一体となつており、極めて激烈な販売競争上、査定員の査定を相当上廻る価額で中古車を下取して新車を販売したり、或る販売会社に所属する査定員が自社の新車を販売する場合に、或る程度下取価額に手心を加えたりすることがあり、利用者も、数年間(約二年といわれている)使用した後は、なるべく高価に旧車を引き取つてもらつた上で新車を購入するのが一般であり、旧車を下取に出さないで新車だけを購入するという方法は次第に減少してなくなる傾向にあることも又公知の事実である。

とすると、全面的に信用できるかどうかはともかく、登録落ち価額ないし査定員の査定価額は、一応自由市場における自動車の交換価値であると見ることができるけれども、販売会社の新車価額ないし下取価額は、必ずしも自由市場における交換価値を意味するものではないといわなければならない(政策的な面から先ず販売会社で必ず新車の登録をした上で販売することを義務ずける制度を採用すれば、登録落ちということ自体発生する余地はない。)から、査定員の査定した減価額を事故による損害額であると速断するのは相当でない。それよりも、前述のように、旧車の下取が一般化している現在、或る事故による破損車の現実の下取価額が通常あるべき下取価額を下廻つた場合には、特段の事情がない限り、両者の差額が事故によつて生じた損害であると見るのが相当である。とすると、本件自動車について下取価額を減額すべき特段の事情の認められない本件においては、前記認定の通常あるべき下取価額金四五万円から実際の下取価額金三五万円を差し引いた金一〇万円が、本件事故によつて生じた減価損害額といわなければならない。 (吉永順作)

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